スノーシュートレッキングは各地で行われるようになりつつありますが、白樺湖周辺のスノーシュートレッキングの魅力は、幾重にも重なる緩やかな草原美を堪能できること。
緩やかなコースなので、初心者でも、三世代でも、気軽に楽しめます。
ビーナスライン周辺に広がる、霧ヶ峰をはじめとしたなだらかな斜面。山というよりも草原の趣の風景は、この地が周辺集落の「採草地」として利用されてきたことから生まれました。採草地とは、家畜の飼料や、田畑の肥料の原料になる草を刈り取るための草原のこと。良い草が毎年生えるようにと、山を焼くことで現在のような大草原がつくりあげられていきました。戦後になると開拓とともに牧場がつくられ、雄大に広がる草原や牧場は、この地域を代表する風景として人々の心に強く刻まれるようになりました。
採草地として利用されるようになったのは500年も前のこと。この美しい風景は、現在の高原リゾートが生まれる遥か昔から、人と自然が向き合うなかで育まれてきた風景なのです。
昭和30年代に入ると採草がおこなわれなくなり、次第に樹木が増えつつありますが、こうした人の手が生み出した草原は、日本には1%しかないといわれる貴重なもの。そんな人と自然がつくりだした草原美を、冬の間も存分に楽しめるのがスノーシュートレッキングなのです。
スノーシューとは、雪の上を歩く「かんじき」の西洋版。雪深い場所を普通の靴などで行こうとすれば足が埋まって歩きづらいものですが、スノーシューを履けば、気軽に雪上の散策が楽しめます。
急な斜面を登山のように上り下りすることができたり、森の静寂さを感じられたりと、歩く山によってその魅力はさまざま。では、白樺湖周辺でのスノーシュートレッキングの魅力とは?
まずは、何はさておき草原や牧場だからこそ、どこまでも続くような雄大な風景を楽しめるところ。そのため急峻な部分がほとんどない緩やかなコースで、年齢問わず、三世代で楽しめます。
2つ目は眺望。たとえば車山山頂からは富士山、八ヶ岳、蓼科山、浅間山など、360度のパノラマが楽しめます。午後になると雲が出やすくなるので、なるべく早めに出発するのがおすすめです。
3つ目はたくさんの動物に出会えること。山に入らずとも、普段の暮らしのなかで鹿などに出会うことも多い白樺湖周辺。動物の足跡をたくさんみつけることができるのです。
参考文献
『霧ヶ峰の自然観察』土田勝義編 大正印写(1992)
『ニューレジャーへの挑戦』鶴蒔靖夫著 IN通信社出版部(1985)