著名人が愛した風景

白樺の木々が美しい湖畔、雄大に広がる草原、自然の息吹を感じる渓谷、湧き続ける名湯と
白樺湖周辺の偉大なる自然は、古くから多くの人を惹き付け、魅了してきました。
なかでも著名人が愛し、そして作品に残した風景をご案内します。

白樺湖周辺に観光客が宿泊で訪れるようになったのは昭和25年のこと。学生たちが食料を持参し、自炊で宿泊していくところからはじまりました。そして、翌年からは池の平「高原寮」が本格的に営業を開始したのです。

けれど、観光地としてまだまだ知られていない地域。そこで、蓼科大池と呼ばれていた湖を、立ち枯れた白樺が残ることから「白樺湖」と命名。その風景は訪れた人を魅了し、口コミで評判が広がっていきました。

近くには日本ではめずらしいたおやかな斜面が織り成す草原地の霧ヶ峰。さらには蓼科山や車山など、登山家にも愛される名峰も。こうした雄大な自然を愛する人のなかには、著名人も多くいたのです。

影絵作家の藤城清治は白樺湖の四季を影絵にし、文学者で登山家の深田久弥は蓼科山や霧ヶ峰を百名山として紹介しました。映画監督の小津安二郎は蓼科高原の山荘で脚本を執筆し、詩人で随筆家の串田孫一は霧ヶ峰の風景を多く文章に残しています。白樺湖周辺の風景を切り取った作品は、作者の感動や願いが込められているようで、作品に触れてから見る風景は、また違った色を帯びているように感じます。あるいは、ゆかりのある建物などは、そこにいた事実をありありと実感させてくれるもので、これもまた、そこにある風景に彼らの色が重なってくるよう。

著名人が愛した風景という視点でこの地を見つめ直すことで、ただ美しい自然、ただそこに建つ建物ではない、新しい横顔を垣間見せてくれるのです。

参考文献
『ニューレジャーへの挑戦』鶴蒔靖夫著 IN通信社出版部(1985)