高原に沸く温泉地へ

高原ならではの澄み切った風を感じながら浸かる湯、リゾートらしく遊び心にあふれた湯、武将が傷を癒した湯。白樺湖とその周辺には、数多くの温泉地が点在します。

高原リゾートを満喫したあとは、温泉でゆったりと。

白樺湖が位置する池の平地区に開拓者がやってきたのは、戦後間もない昭和20(1945)年のこと。まだまだ食べ物が足りない時代、食糧生産のために入山し、畑を耕し、牛や羊、豚などの飼育をはじめました。自給自足の暮らしの延長から宿泊施設が誕生したのは、それから7年後。牧歌的な風景を求めて観光客は次第に増えていきました。

この当時はまだ温泉ではなく、人気を博したのは「牛乳風呂」。牧場の牛たちから搾った牛乳は、たっぷり飲んでもなお豊富にあったことから、池の平の開拓者、矢島三人(みつと)氏が考案したものでした。

その当時の牛乳の価格は1合10円ほど。大卒公務員の初任給が8700円の時代にあって、とても高価な飲み物でした。それを一度に5、6升入れたというから驚きます。外国の映画や女優の世界でしか見聞きしない「憧れの牛乳風呂」に、かなりの女性客が訪れたそうです。

その頃のお風呂は木造。というのも、寒さの厳しい白樺湖周辺では、タイルがひび割れてしまうから。しかし、木造の浴槽に牛乳を入れると、滑ったり匂いがついたりしてしまう…。そこで当時の建築常識では考えられないほど厳重にタイルのひび割れ実験を行いました。こうした努力を重ね、白樺湖で初めてタイル貼りのお風呂が完成したのは昭和32(1957)年のことです。

そして時は経ち、平成7(1995)年7月、白樺湖畔に温泉が湧出し、「白樺湖池の平温泉」と名付けられました。それは牛乳風呂から50年ほど経ってからのことでした。

 

白樺湖周辺は高原リゾートとして名高い地域ですが、周辺には歴史ある温泉郷から日帰り温泉施設のみを有する温泉地まで、大小約20もの温泉地が点在する地域でもあります。せっかくの旅だからこそ温泉も楽しみたいところですが、効能も、泉質も、立地も、歴史も、それぞれに異なる温泉地から、どの場所を選びましょう? 白樺湖からの帰り道に気軽に寄りたい、トレッキングの帰りに汗を流したい、紅葉がきれいな温泉に行きたい…。これだけの数の温泉地があるからこそ、どれにしようか迷いながら選ぶことができるのも、白樺湖周辺の温泉の魅力のひとつです。数ある温泉地を、そのお湯の特徴や、特色別にご案内します。旅のかたちに応じて、合う温泉地をお選びください。